叱らずに動かす──関係性を再構築する1on1の技術:第5回
- MIDORI HARA

- 10月20日
- 読了時間: 8分
「やると言ったのに、動かない」──そんな場面に、マネジャーはどう向き合えばいいのか。第5回では、スタイルの違いに気づき、問いかけを整えることで、関係性を再構築する1on1の技術を描きます。
✔ ケーススタディ:進捗が止まった部下との1on1
✔ 単発ケース:スタイルの違いが生む “すれ違い” の正体
✔ PDF教材:「スタイルの違いを整える1on1設計シート」付き
読むだけで終わらせない、実践に寄り添う1on1シリーズ。
目次
信頼と成長を叶える:2025年度版 1on1ミーティング成功の秘訣 シリーズ 第5回
問いかけで関係を整える──叱らずに動かす1on1の技術
言ったのに動かない──マネジャーのもどかしさ
🌳 マネジャーの心構え──「叱る」ではなく「整える」問いかけへ
🌳 理論の背景──問いかけが届く条件とは?
🌳 私の前日譚──スタイルの違いに気づいた瞬間、問いかけが変わった
🌳 実践編──Z世代×リモート環境の1on1ケーススタディ
🌳「Z世代×リモートワーク環境」ケーススタディ第5回 前編
沈黙の空気に、問いかけは届くか?
信頼と成長を叶える:2025年度版 1on1ミーティング成功の秘訣 シリーズ 第5回
問いかけで関係を整える──叱らずに動かす1on1の技術
言ったのに動かない──マネジャーのもどかしさ
「言ったのに、やらない」──そんな部下との1on1に、どう向き合えばいいのか。
強く言えば関係が悪くなる。でも、言わなければチームに影響が出る。
今回は、スタイルの違いによるギクシャクした関係性を整えながら、マネジャー自身の内省と問いかけの技術を通じて、行動変容を促す1on1の実践を描きます。
🌳 マネジャーの心構え──「叱る」ではなく「整える」問いかけへ
部下が “やると言ったのにやらない” ──そのとき、マネジャーはどう向き合えばいいのか。行動の背景にある “スタイルの違い” に気づくことから、問いかけの質は変わっていきます。
1on1に臨むマネジャーにとって、最も大切なのは「何をするか」よりも「どんな姿勢で臨むか」です。部下の行動を “管理する” のではなく、関係性を “整える”。
つまり、
① 事実を一緒に確認する、
② 相手のスタイルに合わせる、
③ 責めずに聞く──この3つの言動です。
その意識の転換が、対話の質を根本から変えていきます。部下が「やります」と言ったのに、やらない。その瞬間、私たちはつい「なぜやらないのか」と詰めたくなります。
しかし、行動の背後には、言葉にならない不安や、スタイルの違いによるすれ違いが潜んでいることもあります。
マネジャー自身が、自分の “クセ” に気づき、相手のスタイルを受け止めることで、1on1は “指導の場” から “協働の場” へと変わっていきます。
小手先のテクニックでは届かない領域に、問いかけは届きます。
そのためには、事実に光を当てながら、感情を押しつけず、誠実に向き合う覚悟が必要です。1on1は、部下の成長を支える場であると同時に、マネジャー自身の “在り方” を問い直す場でもあるのです。
🌳 理論の背景──問いかけが届く条件とは?
1on1の問いかけが届くためには、以下の3つの視点が役立ちます。
✔ 相手のスタイルを理解する(ソーシャルスタイル理論)
✔ 自分の “シャドウ”(影) に気づく(ユング心理学)
✔ 関係性を整える言葉を選ぶ(ニュートラル思考)
これらの視点は、問いかけの質を高め、沈黙の空気を揺らすヒントになります。
1. ソーシャルスタイル理論(スタイルの違い)
人にはそれぞれ、意思決定やコミュニケーションのスタイルがあります。
・分析型(アナリティカル)
・行動型(ドライバー)
・協調型(アミアブル)
・表現型(エクスプレッシブ)
の4分類を理解することで、部下の反応や沈黙の背景が見えてきます。
2. ユング心理学(シャドウ/影と投影)
相手に強く反応してしまうとき、それは自分の “認めたくない側面” が投影されている可能性があります。
ユング心理学の「シャドウ」と「投影」の概念は、問いかけの前にある “自分のクセ” に気づくヒントになります。
3. ニュートラル思考(感情を押しつけない問いかけ)
感情を押しつけず、事実に光を当てる問いかけは、関係性を整える力を持ちます。ニュートラル思考とは、評価や感情を一旦脇に置き、状況をフラットに見つめる姿勢です。
🌳 私の前日譚──スタイルの違いに気づいた瞬間、問いかけが変わった
真面目な自分が、どうして “パリピ”? な相手に反応してしまうのか。その違和感の正体に気づいたとき、問いかけの意味が変わった──私の1on1の原点。
駆け出しマネジャーの頃、転職先で出会った “同僚” は、私の “苦手” を凝縮したような人物。上っ調子、ノリがよく、場を盛り上げることに長けている──いわゆる “パリピ”?
一方の私は、仕事面では几帳面。生真面目さがペルソナだった。
だから、噛み合わないのか?
なぜ、こんなに反応してしまうのか?
その問いに向き合う中で、ユング心理学の “シャドウ” と “投影” という概念に出会った。
彼の “いい加減さ” に反応していたのは、私の中にもその要素があるからかもしれない。
認めたくない自分を、相手に重ねていたのだろうか。
その気づきは、問いかけの質を変えた。相手を変えようとするのではなく、自分の見方を整えること。スタイルの違いは衝突ではなく、整える対象であり、問いかけを変える最初のきっかけになった。
あの頃の私は、「正しいマネジメントとは?」と、模索していた。しかし、どんな理論よりも、日々の対話の中に “気づき” があることを知った。
そしてハッとした。私が伝えたかったのは、“自己理解の専門家になること” ではなく、日々の現場で迷いながらも、人を信じて向き合おうとするマネジャーを支えること。
このシリーズの原点も、そこにある。
🌳 実践編──Z世代×リモート環境の1on1ケーススタディ
Z世代の部下との1on1──沈黙の空気の中で、問いかけは届くのか?
リモート環境という制約の中で、マネジャーは “叱る” ではなく “整える” 問いかけを選びます。その選択が、関係性をどう揺らすのか──実際のやりとりから紐解いていきます。

🌳「Z世代×リモートワーク環境」ケーススタディ第5回 前編

🌱【1】ヒロシとカナ──この1on1の背景
👥 登場人物ノナカ・ヒロシ(仮名)/30代後半のマネジャー
Z世代の部下との1on1は初。前回、アイスブレイクの重要性を学んだ。
スズキ・カナ(仮名)/24歳のメンバー入社2年目、リモート中心の働き方に孤独感を抱える。発言は控えめ。
カナさんは新卒2年目のZ世代。人前で話すのが苦手で、オンライン会議でも発言をためらってきた。ヒロシマネジャーはそんなカナさんに対して、“待つ” ことを大切にしながら信頼関係を築いてきた。
今回は5回目の1on1。「未来の種」目標設定:「聴く・質問する」のフェーズ。
沈黙の空気に、問いかけは届くか?
🌱【2】沈黙の1on1── “言えない” が伝わってしまう空気
月曜の午後。定例の1on1。
マネジャーのヒロシは、画面越しに部下のカナを見つめていた。
「…最近、どうですか?」そう問いかけたものの、カナの表情は曇ったまま。
「はい…まあ、ぼちぼちです」短い返答。沈黙。
ヒロシは、何か言いたいことがあるのに、言えずにいる自分に気づいていた。
「この前の目標、進んでないよな…」「でも、ここで言ったら、また関係がギクシャクするかも…」そんな迷いが、言葉を曖昧にさせる。
そして、その曖昧さが、カナにも伝わってしまう。
“言いたくない”ではなく、“言えない”──その空気が、二人の間に静かに流れていた。
🌱【3】マネジャーの独白──「叱る」ことへのためらい
1on1が終わったあと、ヒロシマネジャーは自席でメモを開いた。
《スズキカナ:目標未達。進捗報告なし。1on1での発言少なめ》
「言うべきだったのか?」「でも、言ったら、また距離ができるかもしれない」
ヒロシは、過去の経験を思い出していた。
以前、別の部下に厳しく指摘したことで、関係が冷え込んだことがある。それ以来、“叱る” ことに慎重になっていた。
「でも、このままじゃ、カナも苦しいはずだ」
「言わない優しさが、逆に信頼を損なうこともある」
ヒロシは、次回の1on1に向けて、問いかけを準備し始めた。“責めずに、でも逃さずに”──そのバランスを探していた。
🌱【4】問いかけの再設計──責めずに、でも逃さずに
《問いかけ案》
• 「前回、“やってみます”って言ってくれました。あれからどうでしたか?」
• 「進める中で、何か引っかかっていることがあれば、教えてもらえますか?」
• 「このまま進めると、チームにも影響が出るかもしれません。どうしましょうか?」
ヒロシは、問いかけを “指導” ではなく、“整理” として設計していた。
カナの行動を責めるのではなく、状況を一緒に見つめ直すための言葉。
それが、関係性を整える第一歩になると信じていた。
次回【後編】では、ヒロシマネジャーの問いかけが、カナさんの沈黙をどう揺らすのか──そして、1on1が “再スタートの場” になる瞬間を描いていきます。
ここまででの学びは、“叱らずに問いかけを整える姿勢” が、1on1を再スタートさせる第一歩になるということです。
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「叱らずに動かす──関係性を再構築する1on1の技術:第5回」
ギクシャクした関係性の中で、問いかけがどう届くのか。
そして、スタイルの違いをどう受け止め、行動変容へとつなげていくのか。
PDF教材「スタイルの違いを整える1on1設計シート」とともに、もう一つの1on1の現場を、静かに覗いてみましょう。
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