共感がしんどいあなたへ──疲れない1on1のつくり方:第4回
- MIDORI HARA

- 8月25日
- 読了時間: 9分
更新日:10月16日
共感だけでは、信頼は動かない──。
感情に寄り添い、思考を整える“共感的リーダーシップ”と“ニュートラル思考”。
1on1が「わかってもらえた」で止まらず、「動ける関係」に変わるプロセスを紐解きます。
目次
信頼と成長を叶える:2025年度版 1on1ミーティング成功の秘訣 シリーズ 第4回
共感がしんどいあなたへ──疲れない1on1のつくり方
あなたは1on1のあと、ぐったりしていませんか?
🌳 マネジャーの心構え──共感は「わからない」から始まる
🌳 私の前日譚──「堂々としていいんだよ」の意味
🌳 理論編──共感的リーダーシップ × ニュートラル思考とは
🌳 実践編──Z世代×リモート環境の1on1ケーススタディ
🌳「Z世代×リモートワーク環境」ケーススタディ第4回 前編
🌲【有料エリア 】 寄り添いすぎない聴き方、あります──共感と冷静のバランス
🌲 連続ケーススタディ【続編】 ヒロシ&カナ|目標設定フェーズ|後編
🌲 単発ケーススタディ:「堂々と、ここにいてください」──介護から復帰した年上メンバーとの1on1より
💻💬 Ask Mr. Marple Q&A コーナー
🌲 第4回まとめ|共感とニュートラル思考が育てる信頼
信頼と成長を叶える:2025年度版 1on1ミーティング成功の秘訣 シリーズ 第4回

共感がしんどいあなたへ──疲れない1on1のつくり方
あなたは1on1のあと、ぐったりしていませんか?
「ちゃんと聴いたはずなのに、なぜか疲れている」
「共感したつもりなのに、部下は動かない」
そんな“共感疲れ”に悩むマネジャーが、今、増えています。
今回は、共感と冷静のバランスを整えながら、1on1を “疲れる場” から “動ける関係をつくる場” へと変えていくヒントをお届けします。
「わかってもらえた」だけで終わらせない──対話の先にある “動ける関係性” を、一緒に探っていきましょう。
🌳 マネジャーの心構え──共感は「わからない」から始まる
「自分には、わからないかもしれない」
そう思うところから、共感は始まるのだと思います。
育児や介護、家族の病気やメンタルの不調──いま、職場には想像を超えるライフチャレンジを抱えたメンバーがいます。
でもマネジャーは、いつも当事者であるとは限りません。だからこそ、実感を持ってわかることが難しい。その先にこそ、人間としての信頼が問われる場面があるのです。
第4回では「共感的リーダーシップ」と「ニュートラル思考」という、一見相反するようで実は補い合う2つの視点を扱います。
共感とは、「わかるふり」をすることではなく、わからない現実に丁寧に耳を傾ける姿勢。
ニュートラルとは、感情や先入観に巻き込まれすぎず、相手の語りをそのまま受けとめる力です。
例えば、介護から復帰したメンバーが、かつてのパフォーマンスを取り戻せずに悩んでいたら──
「がんばれ」でも「無理するな」でもなく、まず “見えない負担” に気づこうとする姿勢が大切です。
それが、ベテラン社員の離職リスクを防ぎ、チームの経験知と信頼を守る一歩にもなります。
マネジャーは、“万能であること” を目指さなくていい。
でも、「わかろうとする人」であり続けることはできるはずです。
その姿勢から、1on1の対話は始まっていきます。
🌳 私の前日譚──「堂々としていいんだよ」の意味
私が初めてマネジャーになったとき、性別や年齢、そして背景からか、職場で「黒い羊」のように感じた時期があった。
最初は無意識に周囲の空気をうかがっていたと思う。でも、私は昔から誰にでも分け隔てなく声をかけるスタイル。徐々にお互いを知るうちに、周囲の “メガネの色” も少しずつ澄んでいった。
そんな中、上司からかけられたひと言が、今でも私の教訓になっている。
「堂々としていればいいんだよ」──その言葉に、私はハッとして、ほんの少し胸を張った。
いま思えば、上司は私の「誠実にやりたい」という想いを見ていてくれたのだと思う。
“堂々とする” とは、傲慢になることでも、強がることでもない。相手を信じ、自分を否定しない態度のことだ。
転職したばかりの人、育児や介護から復帰したばかりの人、年齢的に周囲と違う立場にいる人──
そういうメンバーが、自信はあるのに一歩を踏み出せないでいる姿を見かけたら、私はこう声をかけるようにしている。
「大丈夫。堂々としていいよ」
この言葉は、私の1on1での “とっておきのキーワード” にもなっている。
不安や戸惑いの中にいる人にこそ、「あなたはここにいていい」と伝える力があるからだ。
🌳 理論編──共感的リーダーシップ × ニュートラル思考とは
「共感的リーダーシップ」と「ニュートラル思考」この二つは、相反するものではなく、1on1の質を高める両輪です。
共感的リーダーシップとは、相手の立場を尊重し、感情や背景を理解しようとする姿勢です。心理的安全性の土台として欠かせない要素であり、相手が「ここにいていい」と感じられる環境をつくります。
一方のニュートラル思考とは、「感情と事実を区別し、思い込みを取り除いたうえで、ありのままの状況を捉え、自分ができることにフォーカスする」思考スタイルです。感情に巻き込まれすぎると、私たちは現実を見失い、判断や行動がブレてしまいます。
ニュートラル思考は、冷静さを保ちながら行動につなげるための “内なるコンパス”のようなもの。
マネジャーに求められるのは、「ただ共感する」ことでも、「ただ合理的に判断する」ことでもありません。感情に寄り添いながら、状況を事実ベースで見立て、行動をともに考えていく力です。
この2つの視座が交差する地点にこそ、1on1が「わかってもらえた」で終わらず、「動ける関係」へと変わる転換点があります。
では、実際の1on1では、どんな対話がその“転換”を生むのでしょうか?
🌳 実践編──Z世代×リモート環境の1on1ケーススタディ
このケースは、Z世代の若手社員とマネジャーが、1on1を通じて「伝える力」を育てていく実例です。
リモート環境という制約の中で、共感的リーダーシップとニュートラル思考がどう機能するのか──その “対話のリアル” を、ヒロシとカナのやりとりから紐解いていきます。

🌳「Z世代×リモートワーク環境」ケーススタディ第4回 前編

👥 登場人物
🌱【1】ヒロシとカナ──この1on1の背景
👥 登場人物
ノナカ・ヒロシ(仮名)/30代後半のマネジャーZ世代の部下との1on1は初。前回、アイスブレイクの重要性を学んだ。
スズキ・カナ(仮名)/24歳のメンバー入社2年目、リモート中心の働き方に孤独感を抱える。発言は控えめ。
カナは新卒2年目のZ世代。人前で話すのが苦手で、オンライン会議でも発言をためらってきた。ヒロシはそんなカナに対して、“待つ”ことを大切にしながら信頼関係を築いてきた。
今回は4回目の1on1。いま彼らは、1on1ミーティングのタイムラインで言う「未来の種」──目標を一緒に見つけるフェーズに差し掛かっている。
🌱【2】オンライン越しに届いた小さな芽
「前回のメモ、少しだけやってみたんです」
画面越しにそう言って、カナはPC画面を共有してくれた。メモアプリには、シンプルな箇条書きが並んでいた。
・言おうとしてやめた → 朝会での意見共有の場面
・少し言えたけど迷った → チームに感謝を伝えたとき
・もっと話せたかも → 相手がうなずいてくれたとき
ヒロシはそのメモをじっと見つめ、やさしく声をかけた。
「ありがとう。ちゃんと向き合ってくれたの、伝わってくるよ」
「でも……“伝える”って、やっぱりちょっと怖いです」
🌱【3】共感的リーダーシップ × ニュートラル思考
ヒロシは、すぐに答えを出さない。
少し間を取ってから、こう問いかけた。
「“伝える”って、全部を言わなきゃいけない、って思ってるのかな?」
カナは目を見開き、少し考えてから、首をかしげた。
「……たしかに。“ちゃんと話さなきゃ”って、どこかで思ってたかも」
「でも、“少しだけでも伝える”のも、十分“伝えること”だよ」
共感的リーダーシップとは、相手の感情に寄り添い、評価せずに受け止める姿勢。
ニュートラル思考とは、思い込みに気づき、今できることに焦点を当てる思考の習慣。
ヒロシはこの2つを重ね合わせながら、問いかけの力でカナの内省を引き出していた。
🌱【4】言葉が動き出す瞬間
「……“ちゃんと伝えなきゃ”じゃなくて、“ちゃんと伝えたい”のかも」
カナのその一言に、ヒロシはしっかりとうなずいた。
「“伝えたい”って思えた時点で、もう動き出してるよ」
「じゃあ…次の朝会で、最後の締めコメント、私がやってみてもいいですか?」
「それ、すごくいいと思う。どんなこと、伝えてみたい?」
少し沈黙が流れて、カナは照れくさそうに言った。
「……“ありがとう”って、一言、ちゃんと言ってみたいです」
ヒロシは画面越しに微笑んだ。
「その“ひと言”こそ、カナさんの伝える力だよ。アサーションだと思うよ」
こうして、カナは「話せるようになりたい」という漠然とした願いから、\n「伝えたいことを、自分の言葉で届けたい」へと、一歩踏み出しました。
その“ひと言”を、ヒロシは「アサーション」と呼びました。
でも、それって──どういう意味なのでしょうか?
次回、カナが初めて「自分の声」で想いを伝える場面がやってきます。
彼女の挑戦の先に見えてきた、“自分らしい伝え方”とは?
note記事有料エリアのご案内──リアルな悩みに応える実践ガイド
note記事の有料エリアでは、続編【ヒロシとカナ|目標設定フェーズ:後編】に加え、上司も部下も悩む「介護休業明けメンバー」との1on1ケーススタディ、読者のリアルな悩みに応える「ミスターマープルQ&Aコーナー」も掲載!
補足教材のご案内|育休復帰ケースの「成功例」も読んでみたい方へ同じ登場人物による “信頼と再スタート” の対話を、PDFでダウンロードしてご覧いただけます。
共感と境界線のバランスをとるための視点や工夫がつまった「共感しすぎないための1on1ミニハンドブック」も、PDFでダウンロード可能。
「伝える力」を育てる、リアルで等身大のケースが詰まった実践ガイド。
▶ 続きは、有料エリアでじっくりご覧ください。
📢 お得な有料マガジンの詳細はこちら▼1,500円(6回分)→ 300円×6回=1,800円相当 → 300円お得!
2025年版1on1ミーティング成功の秘訣シリーズ|ダイアリー式メンター Hara|note上司が主導する1on1は、もう時代遅れ? 2025年、マネジャーに求められるのは、部下と“共に成長する”対話力。“気づき”note.com
会員登録せずに記事を購入する方法


コメント