気づきを実らせる──支え合う1on1の果実:最終回
- MIDORI HARA

- 4 日前
- 読了時間: 8分
信頼と成長を叶える:2025年度版 1on1ミーティング成功の秘訣 シリーズ 最終回
気づきを実らせる──支え合う1on1の果実
シリーズ最終回は、信頼と成長を育ててきた1on1の “果実” を見つめます。「支え合う文化」としての1on1をどう根づかせ、気づきをどう実らせるか。キャリア相談やZ世代との対話を通して、その静かな手応えを探ります。
“できなかった” から “見えてきた” へ。そして今、“実る” ときがきました。
ヒロシマネジャーとカナの1on1は、沈黙や迷いを越えて、小さな「気づき」を行動へと変えていきます。信頼が芽を出し、支え合う文化が育つ瞬間。
最終回は、1on1が「成果を問う場」ではなく、「関係を育てる場」へと変わるプロセスを描きます。
🌠最終回に寄せて──確信と、何よりの感謝と
ここで皆さんに、あらためてお伝えさせてください。
このシリーズは、プロの対人援助職や、特別な専門性を持つ方だけに向けたノウハウではありません。
企画の時点から、私はこれまで出会ってきた多くのマネジャーやチームリーダーの姿を思い浮かべていました。
限られた時間、限られた予算、そして立場や影響力の制約がある中でも、昨日より少しでも前を向こうとしていた人たち。
自分の力や “らしさ” を、どんな形で発揮できるのか模索しながら、それでも対話に向き合おうとしていた人たち。
そうした “等身大で挑む人たち” に伴走したいという思いで、このシリーズを作ってきました。
私は、1on1が「投資に値する」と確信しています。数多の経験が教えてくれました。講習やメンタリングで出会った方々の姿が教えてくれました。
信頼関係をつくるのは、テクニックよりも、マネジャーの態度・姿勢・覚悟――その非言語的なメッセージの積み重ねだということ。
だからこそ、私はこのシリーズを企画し、開発し、あなたの職場で “支え合う文化” が一歩ずつ育つことを願ってきました。
この連載で得た教訓を大切にしながら、これからも、あなたのお役に立てる新しい企画を静かに育て続けていきます。
そんな思いと感謝を胸に、ここから最終回の物語へ入っていきます。
🌳マネジャーの心構え──“果実” を焦らず、育てる姿勢を持つ
1on1の目的は、成果を出すことだけではありません。目の前の行動に一喜一憂せず、「気づきが実る時間」を信じて待つこと。それが、マネジャーに求められる成熟した姿勢です。
部下の変化は、目に見える行動よりも前に、“内なる気づき” として静かに芽を出しています。その芽が伸びるには、「安心して考えられる余白」と「共に見守る伴走」が欠かせません。
焦らずに信頼を積み重ねることで、1on1は “評価の場” から “支え合う場” へと変わっていきます。マネジャー自身の問いかけが、その変化のきっかけになるのです。
🌳 私の前日譚──「影」を知ることから、支え合う文化へ
自分の「影」を知る。それは、言葉で言うほど簡単なことではない。欠点や不器用さ、できれば目を背けたくなる自分の一面を、静かに見つめる勇気が要る。
一方、他者を受け入れるとは、想像力を働かせることでもある。人を「こうあるべき」で測るのではなく、その人なりの合理性や背景を理解しようとする姿勢――それが、対話の土台になる。
人と働くというのは、互いを受け入れながら、同じ方向へ歩みを重ねていくことだと思う。「ここにいても大丈夫」と感じられなければ、人は安心して学ぶことも、挑戦することもできない。
そして私は気づいた。
1on1とは、行動を変える技術である前に、「支え合う文化」を育てる、小さな対話の単位なのだと。
人的資本とは、単なるスキルの集積ではない。むしろ、支え合う文化がどれだけ浸透しているか――その深度を示すものだ。
信頼は、単独では存在できない。関係性の中で育まれ、やがて組織の未来を支える“見えない土台”になっていく。問いかけを通して、その “見えない文化” が少しずつ育っていくこと。
それが、私の1on1に込めた願いであり、これから描く最終回の物語の出発点である。
🌳 実践編──Z世代 × リモート環境の1on1ケーススタディ
1on1は、行動を促す場であると同時に、信頼を育てる時間でもあります。ヒロシとカナの1on1が歩んできた対話の軌跡には、“支え合う文化” の種が息づいています。
最終回では、気づきが行動に変わり、キャリアを支える1on1の本質を描きます。

🌳「Z世代×リモートワーク環境」ケーススタディ最終回 前編
「できなかった理由を見てみたい」──その一言から、1on1の本当の対話が始まります。ヒロシマネジャーとカナさんのふり返りは、成果を急ぐのではなく、考える時間を取り戻すこと。気づきを言葉にすることで、信頼と支え合いの文化が静かに芽生えていきます。

🌱【1】ヒロシとカナ──この1on1の背景
👥 登場人物ノナカ・ヒロシ(仮名)/30代後半のマネジャー
Z世代の部下との1on1は初。待つこと、問いかけの重要性を学んだ。
スズキ・カナ(仮名)/24歳のメンバー入社2年目、リモート中心の働き方に孤独感を抱える。発言は控えめ。
カナさんは新卒2年目のZ世代。人前で話すのが苦手で、オンライン会議でも発言をためらってきた。ヒロシマネジャーはそんなカナさんに対して、“待つ” ことを大切にしながら信頼関係を築いてきた。
気づきを実らせる──支え合う1on1の果実
🍃 Scene 1:再会──「気づきメモ」を手にして
2週間ぶりの1on1。
画面の向こうで、カナさんが小さなノートを開いた。
そこには「気づきメモ」と書かれている。
「前回、教えてもらった “感じたことを書いてみる” を続けていました」
少し恥ずかしそうに言いながら、カナさんはページをめくった。
“できなかった理由を見てみたい”──あのときの言葉が、静かに形になっていた。
ヒロシマネジャーは頷きながら尋ねた。「やってみて、どんな発見がありましたか?」
🍃 Scene 2:Check──気づきを見つめる時間
「思っていたより、“話しかける前の迷い” が多いことに気づきました。誰かに声をかける前に、“ちゃんと答えられるかな” って考えすぎて、止まってしまっていたみたいです」
ヒロシはゆっくりと返した。
「気づけたのは大きな一歩ですね。その “止まる瞬間” を知ることが、次の動きにつながります」
カナさんはうなずいた。
「はい。なんか、責められる気がしなくて、ちゃんと話せました」
ヒロシは微笑んだ。
「大丈夫。1on1は、評価じゃなくて、考える時間ですから」
🧭 【PDCAとは?】
PDCAとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(ふり返り)」「Act(改善)」の4つのステップを回して、行動を定着させるためのプロセス。
このケーススタディでは、行動の “振り返り” から “改善・定着” へとつなげるフェーズです。1on1では、結果よりも「続けてみたい」という感情を引き出すことで、行動が一時的な努力で終わらず、“習慣” として根づいていきます。
もちろん、続けることは本人にとってもマネジャーにとっても簡単ではありません。だからこそ、互いの小さな前進を認め合う姿勢が、信頼の土台を育てていくのです。
🍃 Scene 3:Plan──次の一歩をデザインする
ヒロシマネジャーはノートを指しながら提案した。
「次の1週間、“声をかけてみたい相手” を一人決めてみませんか?どんな話をしてみたいか、軽く考えておくだけでもOKです」
カナさんは考え込み、少し笑った。
「じゃあ、同じチームのナツミさんに。最近、話す機会がなかったので、自分から聞いてみようと思います」
ヒロシマネジャーは短く「いいですね」と頷いた。
「それなら、次回の1on1で、どんな気づきがあったか一緒にふり返りましょう」
🍓 前編まとめ
気づきを言葉にすることで、カナさんの中に “行動への芽” が生まれた。
次の1on1では、その芽がどのように実を結ぶのか──。
⏩ 後編へ続く:「行動が変わるとき、信頼が実る瞬間」
🍎 まとめ──“果実” が実る瞬間に立ち会うということ
ヒロシマネジャーとカナの1on1は、“できなかった”から始まり、“できた” に終わりませんでした。それは、「できるようになること」よりも、「続けていく力」を育てる時間だったのです。
問いかけによって気づきを引き出し、その気づきを “続けてみたい” という意志に変えていく。そこに、1on1の本当の価値があります。
1on1とは、指導ではなく伴走。
完璧な答えを求めるより、対話の中に小さな「前進のサイン」を見つける。
その積み重ねが、やがて信頼という果実を実らせていくのだと思います。
そして──
支え合う文化は、誰か一人が掲げてつくるものではなく、日々の1on1という “対話の習慣” の中で、静かに育っていくものです。
🪴 有料エリアのご案内
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
最終回の有料エリアでは、「叱らずに動かす」から「キャリアを支える」へ
1on1の終着点= “気づきから行動への橋渡し”
ヒロシとカナの【後編】に加えて、もう一つのケーススタディ──「キャリア相談」2つのケーススタディとMr. MarpleのQ&Aで、「成長を支える対話」の全体像を丁寧に紐解きます。
📘 有料エリアで学べること:
部下の沈黙が “気づき” に変わる瞬間
キャリア相談を “逃げ” ではなく “成長” に変える問い
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