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自立したい。でも助けられたい──『シンデレラ・コンプレックス』から読み解く、女性の心の揺らぎ ─ 夏の読書会でたどる、女性と自由のものがたり 完

  • 執筆者の写真: MIDORI HARA
    MIDORI HARA
  • 8月25日
  • 読了時間: 6分

更新日:9月7日

1980年代のアメリカで話題となった『シンデレラ・コンプレックス』

自立と依存の間で揺れる女性たちの心に、今も通じる問いがあります。

働く女性が抱える “甘え” や “強さ” の葛藤を、読書会を通じて静かに見つめ直します。

この夏、自分の中の「支えられたい気持ち」に耳を澄ませてみませんか?

 

目次

  1. 自立したい。でも助けられたい──『シンデレラ・コンプレックス』から読み解く、女性の心の揺らぎ

  2. 🕊️ はじめに──この夏、私たちが耳を澄ませてきたこと

  3. 自立と依存──その間で揺れる私たち

  4. 歴史背景と著作紹介

  5. 『シンデレラ・コンプレックス』とは?

  6. ブッククラブ|対話パート 

  7. 📝 ポイント

  8. 問いかけ──あなたの中の “シンデレラ” に出会う夏

女性と自由のものがたり──“私の姿”は誰のためのもの?



自立したい。でも助けられたい──『シンデレラ・コンプレックス』から読み解く、女性の心の揺らぎ



夏の読書会でたどる、女性と自由のものがたりへ、ようこそ!

冷たいフルーツティーでも片手に、お話ししませんか。



「夏の読書会でたどる、女性と自由のものがたり」シリーズの見出し画像。砂浜にサングラスと数冊の本で、夏の読書会を象徴するイメージ



🕊️ はじめに──この夏、私たちが耳を澄ませてきたこと


この夏、私たちは読書会を通じて、女性たちの“本音”に静かに耳を澄ませてきました。


第1回では、戦後の女性たちの声に。第2回では、1970年代フェミニズムの葛藤に。


そして


今回は、1980年代の“自立と依存”という揺れる心に、そっと触れてみます。



自立と依存──その間で揺れる私たち


あなたは “強くならなきゃ” と、自分を追い込んでいませんか?


職場で、家庭で、友人の前で。


私たちはいつから「ひとりで完璧にこなすこと」が自立だと思い込んだのでしょう。



今回の読書会で取り上げるのは、コレット・ダウリング氏の『シンデレラ・コンプレックス



この言葉は、1980年代、アメリカのキャリアウーマンたちが脚光を浴びる裏で、無意識に「誰かに助けられたい」「守られたい」と願う女性たちの心を指し示したものでした。



これは昔の話ではありません。



「女性は家にいるべき」から「女性は家庭か仕事を選ぶべき」、


そして「女性は家庭も仕事も両立するべき」へ──



変わってきた価値観の中で、


私たちはいったい何を望み、何にしばられているのでしょうか。



『シンデレラ・コンプレックス』表紙風イメージと現代女性を象徴するシルエット



歴史背景と著作紹介

──1980年代、キャリアウーマンの光と影


1980年代のアメリカは、肩パッド入りのスーツに身を包んだ“キャリアウーマン”がメディアで輝きを放ち始めた時代でした。



女性はようやく職場に進出し、経済的に自立できるようになった。


けれど、その陰には「守られたい」「支えてほしい」という感情を


口に出せず抱え込む人々がいました。



コレット・ダウリング著『シンデレラ・コンプレックス』書影・紹介

コレット・ダウリング氏  米国作家



『シンデレラ・コンプレックス』とは?


コレット・ダウリング氏の『シンデレラ・コンプレックス』は、そんな “助けを求めることをためらう心” に光を当てた画期的な本です。


童話のシンデレラが王子様に救われるように、現代の女性たちも無意識に誰かに頼りたい、でも頼ってはいけない──そんな心理的矛盾を抱えています。


一方の日本では、1986年に男女雇用機会均等法が施行され、法の上では平等が謳われました。


でも現実は、総合職と一般職という建前の選択、結婚・出産をめぐるキャリアのプレッシャー。本当に「選べる自由」があったのか、問わざるを得ません。

 

 


ブッククラブ|対話パート 

──“ひとりで頑張る” ことの疲れと気づき



多世代による対話・自立と依存のはざまを語る読書会、場所のイメージ画像


登場人物ブッククラブメンバー

  • ナオミ(バブル世代・人事部マネジャー)

  • マコト(氷河期世代・法務部課長)

  • アイ(ミレニアル世代・マーケティング部チームリーダー)

  • モエ(Z世代・新卒入社2年・総合職)

 

モエ:なんか最近思うんです。強くなきゃ、負けたくないって頑張ってきたけど、正直、すごく疲れるときあります。

アイ:私も同じ。全部背負い込んで『一人でできる』って言い張るの、実は面倒くさいって見られてるかもしれないし、もうちょっと力抜いてもいいのかも。

 

▶︎ あなたは、誰かに頼ることを“弱さ”だと思っていませんか?

▶︎ それとも、“支え合うこと”が強さだと感じた瞬間がありますか?

 

マコト:勝ち負けじゃなくて、一緒に強くなるっていう視点、もっとあっていいんじゃないかな。



モエ:……でも、全部一人で解決しなきゃって考えてたけど、そもそも一人でやる必要、ないんですよね。



アイ:そうだね。誰かに頼ること、支え合うこと、それがあるから自分らしくいられるのかも。



ナオミ:100%わかり合う必要もないし、全部一人で抱え込む必要もない。


適度な距離感で支え合える関係って、私たちが思ってる以上に大事なんじゃないかしら。



マコト:守る・守られるじゃなくて、支え合う。そういう関係をもっと作っていけるといいな。



モエ:……それ、逆に、私にとっては勇気のいることかもしれないけど、やってみたいな。



アイ:うん、


誰かと一緒だからこそ、できること、楽しめることって、あるんじゃない。きっと。



📝 ポイント


自立とは何か──カントとともに考える、私の選択


「精神的自立」と「経済的自立」は同じではない経済的に自立していることは、精神的な自立を保証するものではありません。


哲学者イマヌエル・カントは「自律」を、人が自らの理性によって行動を選ぶことと定義しました。


つまり、外的な自由(収入や職業)だけでなく内的な自由──自分の価値観に基づいて選択する力──が必要なのです。


現代の女性たちは、経済的に自立することで社会的な役割を果たしているように見えます。しかしその内側で、「誰かに認められたい」「期待に応えたい」という感情に縛られているとしたら、それは本当の意味での “精神的自立” とは言えないのかもしれません。


自立とは誰にも頼らないことではなく自分の声に耳を澄ませて選び取ること。その静かな力が、私たちの生き方を支えているのではないでしょうか。


問いかけ──あなたの中の “シンデレラ” に出会う夏


あなたの中に “シンデレラ” はいますか?


自立したい。でも、助けられたい──


そんな揺れる気持ちは、人間らしさの一部かもしれません。



この夏、自分の中の “矛盾” に目を向け、


それをどう受け止めるか、考えてみませんか?




女性と自由のものがたり──“私の姿”は誰のためのもの?


女は家庭にいるもの。

女は家庭か仕事を選ぶもの。

女は家庭も仕事も両立させるもの。


時代は移り、価値観も変わりました。でもその変化は、本当に自分が心から望んだものですか?


社会の期待。

周囲の目。

同じ性の者たちの無意識の視線。

それに追い立てられていないか、

それとも、自分が選び取った「私の姿」なのか。


そしてもうひとつ──あなたは、自分のために生きていますか?それとも、みんなのために生きていますか?


この問いに、すぐに答えを出す必要はありません。

ただ、静かに胸の奥で、問い続けてみてください。



夏の読書会でたどる、女性と自由のものがたり シリーズ ▼


「女らしさ」とは何か──ベティ・フリーダンが問い直した“期待”と“自由”


1970年代フェミニズムと自由の代償──『飛ぶのが怖い』から読み解く、女性たちの本音




📢 この読書会シリーズはここで一区切り。

次は「働く女性のライフサイクル」──

年齢、キャリア、ライフイベントをめぐる、

12の物語が待っています。





 

 



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